腫瘍内科・血液腫瘍内科

腫瘍内科・血液腫瘍内科では、犬や猫のさまざまな「がん」(悪性腫瘍)に対する専門的な診断と治療を行います。がんは早期発見と適切な治療計画が、ペットの生活の質(QOL)を維持する上で非常に重要です。当院では、ご家族のお気持ちに寄り添いながら、一頭一頭の状態に合わせた最適な治療法を提案します。外科手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療(連携施設)、緩和ケアなど、多角的なアプローチでがんと向き合っていきます。

こんな症状ありませんか?暮らしの中の小さな変化が病気のサイン

一見すると「年のせいかな?」と感じるような些細な変化が、実は病気のサインであることも少なくありません。以下のような症状が一つでも気になる場合は、お早めにご相談ください。

▼特に気づきやすい変化

  • 体のどこかにしこりがある、または急に大きくなってきた
  • 急に痩せてきた、食欲はあるのに体重が減る
  • 元気がない、散歩に行きたがらない、寝ている時間が増えた
  • 食欲が落ちた、食べる量が減った

▼具体的な症状

  • 皮膚・口: 皮膚のしこりが赤くなったり、出血や潰瘍(かいよう)になっている。口の中や歯ぐきにしこりや腫れ、出血がある。
  • 呼吸・咳: 呼吸が浅く速い、または苦しそう。咳やくしゃみが増えた。
  • 消化器: 嘔吐や下痢が続いている。便が細くなった、便に血が混じる。
  • 排泄: 排泄がしづらそう、血尿が出る。
  • 様子・動き: 歩き方がふらつく、動きがぎこちない。けいれん発作を起こす。異常に水をたくさん飲むようになった。
  • その他: お腹が張ってきた。リンパ節(あごの下・脇・股など)が腫れている。出血が止まりにくい。

▼健康診断での指摘

  • 血液検査で「貧血」や「白血球の異常」を指摘された。
  • レントゲンやエコー検査で「影」や「腫瘤」が見つかった。

当院で診療する主な疾患

犬と猫、またその品種によってもかかりやすい病気は異なります。当院では幅広い腫瘍疾患の診断・治療に対応しています。

乳腺腫瘍

お腹の乳腺にできるしこりで、犬では良性・悪性どちらも見られ、悪性化する可能性があります。猫では多くが悪性で、若いうちの避妊手術で発生を大きく減らせることがわかっています。

リンパ腫

リンパ球ががん化し、全身のリンパ節や様々な臓器に腫瘍を形成する血液のがんです。首・胸・腸など発生部位によって症状が異なります。体重減少や食欲不振、嘔吐・下痢が続く場合は早めの検査が必要です。

肥満細胞腫

アレルギー反応に関わる肥満細胞ががん化する病気で、皮膚にできる腫瘍で、イボや虫刺されに似ることがあります。見た目が良性でも広がることがあるため、早めの検査をおすすめします。

扁平上皮癌

皮膚や口の中、鼻にできるがんで、猫では口腔内に多く見られます。口臭やよだれ、食べにくさなどの変化が続くときは注意が必要です。

悪性黒色腫(メラノーマ)

黒いできものが急に大きくなる、出血する場合に疑われます。口の中や爪の根元に多く、特に犬でよく見られる腫瘍です。

皮膚・皮下の腫瘍

犬で最も多く、猫でも比較的見られるケースがあります。脂肪腫など良性のものもありますが、見た目では区別できません。

口腔内腫瘍

歯ぐきや舌、口蓋にできる腫瘍で、歯周病に似た症状でも注意が必要です。

肝臓・胆管・消化管の腫瘍

高齢の犬猫で増え、犬では肝細胞癌、猫では胆管癌や消化管リンパ腫が比較的報告されています。国内データでは割合が明確に示されていないため、年齢や症状に応じた検査が重要です。

白血病

骨髄で血液細胞が異常に増殖し、正常な血液が作れなくなる病気で、急性または慢性、骨髄性またはリンパ性に分類されます。(急性・慢性)

多発性骨髄腫

骨髄で形質細胞ががん化し、異常なタンパク質を産生することで骨の破壊や様々な症状を引き起こします。

その他

組織球肉腫、形質細胞腫、胆管癌 など

               

最善の治療のために診断までのステップ例

的確な治療を行うため、動物への負担を考慮しながら、段階を踏んで検査を進めます。

Step1

診察と基本検査(現状の把握)

まずは丁寧な触診や問診で全身の状態を確認し、血液検査を行います。しこりがある場合は、細い針で細胞を採って調べる「細胞診」で、腫瘍の種類を大まかに推測します。

Step2

画像検査(腫瘍の広がりをチェック)

レントゲン検査や超音波(エコー)検査で、腫瘍の大きさや、肺など他の場所への転移がないかを確認します。

Step3

確定診断(治療の作戦を立てる)

腫瘍の一部を採って詳しく調べる「病理組織検査」で、腫瘍の種類と悪性度を確定します。これは、今後の治療方針を決めるための最も重要な検査です。必要に応じて、より精密なCT検査(連携施設にて)をご提案することもあります。

一緒に考える治療方針

診断結果と、動物の状態、ご家族の希望を総合的に考慮し、以下の治療法を組み合わせて最善のプランをご提案します。

外科手術(手術で取り除く)

腫瘍を取り除く最も基本的な治療法です。

薬物療法(お薬でたたく)

抗がん剤や分子標的薬などを用いて、目に見えない腫瘍細胞の増殖を抑えます。

放射能療法(エネルギーでこわす)

                       

高エネルギーのX線などをがん病巣に照射することで、がん細胞を死滅させたり増殖を抑えたりする治療法です。
※特殊な設備が必要となるため、実施可能施設にご紹介します。

飼い主様へ

「腫瘍」と聞くと、すぐに悪いことを想像してしまうかもしれません。しかし、今は治療の選択肢も増えています。大切なのは、ご家族だけで悩みを抱え込まないことです。私たちは、動物とご家族にとっての“最後の砦”として、どんな状況でも最善の道を一緒に探します。少しでも気になることがあれば、ためらわずにご相談ください。

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