皮膚科

腫瘍内科・血液腫瘍内科では、犬や猫のさまざまな「がん」(悪性腫瘍)に対する専門的な診断と治療を行います。がんは早期発見と適切な治療計画が、ペットの生活の質(QOL)を維持する上で非常に重要です。当院では、ご家族のお気持ちに寄り添いながら、一頭一頭の状態に合わせた最適な治療法を提案します。外科手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療(連携施設)、緩和ケアなど、多角的なアプローチでがんと向き合っていきます。

こんな症状ありませんか?暮らしの中の小さな変化が病気のサイン

ご家族の以下のような行動や皮膚の変化は、かゆみや不快感を伝えているサインです。

▼かゆみを気にする行動

  • 顔や足先、脇の下など同じ場所をしきりに掻く、舐める、噛む
  • 耳を頻繁に掻いたり、頭を振ったりする
  • お尻を床にこすりつけたり、舐めたりする

▼見た目の変化

  • 皮膚が赤い、ブツブツとした発疹が出ている
  • フケが多い、または皮膚がベタベタしている
  • 毛が薄くなった、部分的に地肌が見えている(脱毛)
  • じゅくじゅくした湿疹や、かさぶたができている
  • 皮膚が黒ずんできた(色素沈着)
  • 皮膚にイボやしこりができた

▼耳のトラブル

  • 耳の中から嫌な臭いがする
  • 黒や黄色の耳垢がたくさん出る・耳漏
  • 耳の入り口が赤く腫れている

当院で診療する主な疾患

皮膚の症状は似ていても、原因は様々です。当院では原因を的確に診断し、それぞれに合った治療を行います。

感染症

細菌(膿皮症)、マラセチア(真菌)、皮膚糸状菌(カビ)、ノミ・ダニなどの寄生虫が原因となる皮膚炎です。

アレルギー・免疫の異常

特定の食べ物や、ハウスダスト・花粉など環境中の物質に体が過剰反応して起こります。自分の免疫が皮膚を攻撃してしまう自己免疫性疾患も含まれます。

ホルモンや内臓の病気

甲状腺や副腎のホルモンバランスの乱れ(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)が原因で、左右対称の脱毛や治りにくい皮膚炎が起こることがあります。

その他

遺伝的素因、ストレスによる過剰なグルーミング、皮膚の乾燥、皮膚腫瘍など、原因は多岐にわたります。

               

最善の治療のために診断までのステップ例

正しい治療のためには、まず原因を特定することが不可欠です。当院では以下のような検査を体系的に進めていきます。

Step1

問診と基本的な皮膚検査(原因の絞り込み)

問診・視診・触診: 症状が始まった時期、食事内容、生活環境などを詳しくお伺いし、皮膚の状態を丁寧に観察します。
皮膚表面の検査(被毛検査、セロテープ法など): 抜け毛や皮膚表面の細胞を顕微鏡で観察し、細菌や真菌、寄生虫の有無などをその場で迅速に評価します。

Step2

感染症やアレルギーの特定

皮膚掻爬検査: 皮膚の表面を少しだけ削り取り、皮膚に潜むダニ(疥癬、ニキビダニなど)がいないかを確認します。
真菌培養検査: 皮膚糸状菌症が疑われる場合に行う検査です。
除去食試験・アレルギー検査: 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎が疑われる場合、原因アレルゲンを特定するために行います。

Step3

内分泌疾患や難治性疾患の精査

血液検査・ホルモン検査: 甲状腺機能低下症やクッシング症候群など、内臓の病気が隠れていないかを確認します。
皮膚生検(病理組織検査): 難治性の皮膚炎や皮膚腫瘍が疑われる場合、皮膚の一部を採取して専門機関で詳細に調べ、診断を下します。

一緒に考える治療方針

               

診断結果と、動物の状態、ご家族の希望を総合的に考慮して、長い目で見て、その子にとって最善の道は何かを常に一緒に考えさせてください。目標は「完治」だけでなく、症状を上手にコントロールして「かゆみのない快適な毎日」を取り戻してあげることかもしれません。

                       

お薬で治す(薬物療法)

                       

皮膚の炎症やかゆみ、感染を抑えるためにお薬を使います。なるべく少ない量で、できるだけ早く良くなるよう調整します。

  • 抗菌薬・抗真菌薬:ばい菌やカビを減らします。
  • 抗炎症薬:赤みやかゆみをやわらげます。
  • アレルギー用のお薬:Apoquel®やCytopoint®など、最新のかゆみ止めも使用できます。
  • 塗り薬:皮膚の一部にだけ症状があるときに使います。
                       

手術で治す(外科的治療)

しこりやできもの、うみがたまった部分などは、手術で取り除くことがあります。手術が必要かどうかは、検査でしっかり確認してからご相談します。

  • 小さなできもの:日帰りで切除できます。
  • 大きな腫瘍:麻酔をかけてしっかり取り除きます。
  • 傷や潰瘍が治りにくい場合:皮膚を移植することもあります。

スキンケアで守る(支持・補助療法)

                       

皮膚を元気に保つためのおうちケアもとても大切です。ご自宅で実践可能なケアの方法を具体的にお伝えし、毎日のスキンケアで、再発を防ぐことができます。

  • 薬用シャンプー:汚れや菌を落として皮膚を清潔にします。
  • 保湿ケア:乾燥肌やフケを防ぎます。
  • 栄養サポート:皮膚に良い脂肪酸やビタミンを補います。
  • ノミ・ダニ予防:かゆみや感染を防ぐ基本ケアです。

生活環境を整える(行動・環境療法)

                       

皮膚の調子は、生活環境やストレスとも深く関係しています。体だけでなく、心も元気でいられる環境づくりをお手伝いします。

  • かき壊し防止:カラーやウェアで皮膚を保護します。
  • ストレス対策:安心できる環境づくりを心がけます。
  • 清潔な生活:寝具の洗濯や掃除でアレルゲンを減らします。

飼い主様へ

               

皮膚のトラブルは、時に動物たちのQOL(生活の質)を大きく損ないます。皮膚病の治療は、飼い主様のご協力なしには成り立ちません。特に、シャンプー療法や食事管理、お薬の投与など、ご自宅でのケアが治療の大きな柱となります。
私たちは、診断結果や治療方針を分かりやすくご説明することはもちろん、ご自宅で実践可能なケアの方法を具体的にお伝えし、飼い主様と二人三脚で治療を進めてまいります。

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